繋いでいるのは<3>








眩い朝日に蒼を細めて金髪は空を仰いだ。
寒いくらいの気温だが、身を清めているような感覚に心地良さを見つける。
すっきりと心の中がからっぽになったような気になる。
そっと目を閉じれば、胸が弾んでどきどきと鼓動が耳が響く。

今日は、特別な日だ。


「ナルー・・・?」
まだ眠そうにうっそりと縁側に佇む黒髪は、寝屋での肌寒さに気付いて起きて来たらしい。
「シカ、おはようございます」
(ああ、眩しい・・・)
目が眩む。
朝日を弾く金髪よりも眩しいのは柔和な笑顔。
誰よりも何よりも望んだもの。
「ナル、抱きしめてくれ」
「え?」
縁側に駆け寄ったナルトは突然のおねだりに瞠目した。
驚いた表情はそのままに、そっとシカマルを抱きしめると、返事の代わりか腰と頭に腕を絡められた。
「・・・どうしましたか?今日は甘えたですね」
「ん?いや、なんとなく」
意味はないんだ、と耳元で囁かれ、ナルトは不思議そうに、ふうんとシカマルの肩に頭を預ける。
「・・・背ぇ伸びたな」
「そうですね、もう少し欲しかったですが」
くすりと笑って回想する。
「あなたと出会ってもう10年以上経ちました」
「そんなにか?早いもんだな」
以前は自分の胸元辺りにしか届かなかった金髪は、今では背伸びしないと旋毛が見えない。
かろうじて頭ひとつ分は高いことにほっとしているなんて金髪は考えもしていないのだろう。
白い首が目に入って、誘われるままに唇を寄せるとくすぐったさにナルトは身を捩ったが、そのままシカマルの好きにさせる。
よくナルトはシカマルに甘やかせ過ぎるのだと言われるが、確かにそうだとシカマルは苦笑した。
自分が望めばこの金髪は持っているもの全てを差し出すのだろう。

「いよいよだな」
はい、と瞼を閉じたままナルトが頷く。
「・・・皆にも、ちゃんとお話しなければ、いけませんね」
若干、陰りが滲んだ心許ない声に、シカマルは抱きしめている腕の力を強める。
自分が暗部だということはともかく、力を抑えて下忍をしながらドベを振舞っていたことは打ち明けねばと思っていた。
「あいつらどうせ来るんだろ」
「うぅ・・・はい」
のらりくらりと避けていたナルトが、ようやくちゃんと中忍試験を受ける気になったと聞きつけ、
同期達はこぞって見学に来るのだと言っていた。
イノとシノは試験官として参加するらしい。
嬉々としてこれはめでたいと宴会を催し、弁当を持って見に行くと言ったヒナタの言葉には、本気で今まで逃げ回ったつけが来たのだと涙が出た。
「なんだ、緊張してんのか?」
同期のことを口に出した途端、大きく鳴り始めた鼓動にひっそりと笑うと優しく髪を撫ぜる。
「それは・・・しますよ・・・」
できることなら、このうるさく鳴る心臓を置いていきたい。
「あいつらなら、きっとお前を受け入れてくれるさ」
「そう、かな・・・大丈夫かな・・・」
眉をハの字にしてすり寄る金髪が可愛くて、このまま狭い自分のテリトリーで囲って自分以外の誰の目にも映らせず慈しみたいと思う。
・・・できないけど。
苦く笑って、大丈夫だと背をさすってやれば、こんな心の狭い男の言葉をこの金髪はすっかり信じてしまうのだから
シカマルとしては別の意味で少し心配だ。

「そろそろ支度しなくて良いのか?」
あと数刻もしない内に、試験が始まる。
「・・・もう少しなら大丈夫です・・・」
離れがたいのかきゅうとシカマルの服の裾を掴み甘える金髪の耳は紅い。
シカマルはひとつ笑って、せめて中へ入ろうぜと、昔のように抱き上げて運んだ。




どきどきするのは、今から起こるイベントのせい?

変わるかもしれない運命のせい?


あなたとひっつく、



温度のせい?















モドル