かあさま

私のいちばんだいじなひと


いつかいつかわたしがあなたを




まもってみせます




君を護る<1>





「ナルちゃん、最近眠ってないんですか?」

「えっ・・・?」
珍しくうとうととまどろんでしまった。
綱手の書類整理を手伝っていたが、知らぬ間に居眠っていたようだ。
普段はしない失態に、首を傾げた。
この頃からだが以前よりも睡眠を欲している。
「すみません・・睡眠は・・・ちゃんととっているつもりなんですが・・・」
熟睡できたことは生まれてから数えるほどしかないが、それなりにからだを休めてはいる。
心配そうに覗き見るシズネに、大丈夫だと笑って見せる。

「最近、体調が優れないとかありますか?」
「いえ・・・。何と言いますか・・常に少し熱っぽいというか・・・そのせいで眠気が出るというか」
それとも。
“ナルト”の死亡により表で出会った仲間に会えなくなったことで精神的に参っているのか。
現実逃避したいだけなのかもしれない。
まだまだ心の弱い自分に叱咤する。

「・・ナルちゃん、アレちゃんと来てます?」
急に深刻な表情で質問するシズネに困惑する。
アレって・・・アレ?
「ええ・・・ん・・・?」
いや、ここ3ヶ月ほど来てない。
意外と正確に来る方だったが、色々とあって忘れていた。
2ヶ月たったときに不思議に思ったが、精神的にも参っていたこともあるからと気にしていなかった。

「失礼」
ばっとシャツを捲られ、ひやりとした手のひらが下腹部に当てられる。
手のひらに神経を集中させ、しばらくじっと目を閉じ、ふいに開けられ。
「ナルちゃん・・・」
「どうかしましたか・・・?」
真剣な表情に、まさかそんなに悪いのだろうかと危惧する。

言うより早いと、ナルトの手のひらを同じように下腹部に持って行き、問う。
「わかりますか?」
「・・・・・・」
僅かにチャクラをのせ、神経を持って行く。

とくん。

「・・・え・・?」
自分のとは僅かにずれる心音がひとつ。

「わかりますか・・?」
再度問うシズネを信じられないと顔にありありと出して。

まさか。

いや、まさかも何も、あの日しか考えられない。


今日だけだと、自分勝手なわがままでお願いをしたあの日。


私の、私と、彼の、子供・・・。


         ***


「・・・で、どうするんだい?ナルト・・・」
組んだ手のひらに顎を乗せ、ちらりとまだ膨らんでいない腹を見る。
あの後、執務室に戻ってきた綱手に上手く説明できないナルトの代わりにシズネが説明をした。
「・・・・・・・」
「・・よく考えな」

わかっている。
気持ちだけで良いなら、勿論産みたい。
自分の愛したひととの子供だ。

しかし問題もある。

もしも“ナルト”が生きていると世間にバレたとき、その血を受け継ぐ子供が九尾が原因で受けた
あの暴力を受けないとは限らない。
人体実験に使われる可能性もある。
しかも産まれてくるこの子は一生父親を知らない子供になる。
狐憑きの女を母親に持ち、この子は果たして幸せになれるだろうか?

でも、産みたい。
自分にやっと家族ができる。
それだけで生きる気力も沸く。
でも産めない。
産みたい。
嬉しくてたまらないのに、なんて自分勝手な母なのだろうと泣くことさえ罪悪に感じる。

「なあ、ナルト」
じっと泣きそうな顔で腹をさするナルトに綱手が笑う。
「お前はどうしたい?」
「そんなの・・・」
決まってる。
気持ちだけなら最初から揺るがない。
「じゃあ、お前のしたいようにしたら良いじゃないか。私とシズネ、まあ凛も入れといてやるか・・・
も、お前の望むように手伝うよ?」
「・・・父親がいなくても・・?」
「お前がその分愛してやれば良い」
「九尾のことで何かあったら・・・?」
「母だろう?母親ならば子供を守るものだ」
溜まっていた涙が頬を流れた。
「・・良いんでしょうか・・?」
「良いに決まってますよ!!」
きっぱりと言い切るシズネを一瞬きょとんと見つめて。
薄く笑んだ。
「綱手様・・お願いがございます」
「・・・言ってみな」
金髪から覗く目に光を認めて、綱手が微笑む。
「しばらく暗部を休ませていただけますか?代わりに書類関係の仕事を手伝わせてください」
「わかった。暗部の方は凛がやってくれるさ」
ありがとうございます、と頭を下げる。
「あと、住むところなんだが・・・木の葉の外れに小さな村がある。そこは九尾の襲来も免れた
所だから、もし九尾のことがバレてもお前に危害を加える可能性は低いと思う。
田舎だが空気も良いし、何かと手助けしてくれるはずだ」
今住んでいる本宅はそのままに、母体を不安で壊してなるものかと言う綱手に従い頷く。
「大変だろうけれど頑張りな。お前は頑張れる子だから・・・」
ゆったりとナルトを抱きしめて、母がするように髪を梳く。
今度はお前がこうやってやるんだよと。

それに応えるように深く頷いた。















モドル