初めて

初めて惚れただいじなひと


お前はきっと生きていると




信じてる




君を護る<2>






木の葉の外れにある小さな村で女の子が産まれた。
子供とは思えないほど聡く、母に似て優しいと村では評判で大事にされた。
名前は親の名を一文字ずつもらった。



日の出と共に小柄な影が森を抜ける。
この村では銀が取れると言うことで、念のため森には多くの罠が張り巡らされている。
時折、野生の動物がかかっていたりもする。
小さな罠さえ引っかからずに、小柄な影はまっすぐに自宅へ向かう。
白い石垣で囲まれた小さな家。
気配を探ると、中から玄関に向かってくる愛しい気配。
ガラリと小気味良い音を立てて、小さな影が抱きついて来る。
「ただいま、しいな」
「お帰りなさい、かあさま!!」
ぎゅうとしがみついてそのまま離れない子供を抱えなおして玄関をくぐると、自分と同じ姿をした
影分身が困ったように笑った。
「1時間ほど前に起きてしまって・・・」
「あらあら・・・お疲れ様」
労いを送って影分身を消すと、そっと子供を下ろす。
返り血は浴びていないが、日課となっている朝風呂は外せない。
そのことを知っている子供は嬉しそうに子供部屋に行くと、赤い桶におもちゃを盛って戻って来る。
「かあさま、かあさま!しいなも入る!!」
「夜にちゃんと入ったのに?」
「入ったけど入るー」
言い出したら聞かないことも知っているので、苦笑して風呂場に走って行く子供を追いかける。

(あれから4年・・・)
あっと言う間だった。
愛しいひとにも、かつての仲間達に会うことも許されないが、ここまで来れたのは。
「しいなのおかげね・・・?」
ふふ、と笑うと、きょとんとアヒルを浮かばせて不思議そうに見てくる。
朝日が光を持ってきて、片目ずつ色の違う子供の目は、蒼と漆黒がきらきらと輝いた。
いつもは茶色い髪も、今は自分のような金髪に見える。
ああ、愛しいな。
大事な大事な宝物。

何に代えても私が守ってみせる。




           ***





「シカマル」
「・・・何か用ですか」
一応年配を敬っているのか、億劫そうにしながらも一応こちらにからだを向けた。
「・・・また捜してたのかい・・?」
少し悲痛な表情を滲ませて、綱手は手すりに凭れるようにシカマルの隣に立つ。
「火影がそんな暇そうにしてて良いんすか・・?」
一人にしてくれ、とでも言うかのように。
「全く姑みたいに言うんじゃあないよ」
綱手の溜め息に、僅かに苦笑する。

あれから4年。
ナルトは死んだと言ったのに、いまだに生きていると信じてこうやって里が見渡せる場所に
来ては気配を探るという生活。
真実を知っているだけに綱手は心を痛めていた。
頭の良い彼は、すでに推測だがナルトの真実に触れていた。
九尾のことも、力を持ちすぎたための処分も、今どこかで生きているだろうことも。
全てひとりで調べ上げ、あとはナルトが見つかればと、暇を見つけては気配を探る。
さすがに自分の子供を産んで育てているとは知らないようだが。

もう4年だ。
里は何事もなかったかのように穏やかだが、
このままで良い訳がない。

もう良いだろう?

シカマルにもナルトにも幸せになって欲しい。

「お前、ナルトのことが今でも好きか・・・?」
「・・好きだ」
その目は疲れてはいるが光は灯っていて。
「今でも生きていると思っているのか・・?」
問いに、ゆっくりと頷くのを確認して。
「着いて来い」
途端、踵を返す綱手を訝しげに追いかける。
「何なんすかっ・・?」
「お前に里外任務を渡す」
「は?」
「それを上手く使うと良いさ」
晴れ晴れと空を仰ぎ笑う綱手に首を傾げて。

つられて見上げると、


まるであいつの目のようだと




思った。



















モドル