理解した上でもつらいと感じてしまうのは


それほどまでに



あなたを・・・





忘れても<3>








「そう、ですか・・・」
呟いた自分の声が思った以上に覇気がなく驚いた。
シカマルが、一時的とは言え記憶障害だと言う。
ここ一年近くの記憶がないと言うことは、自分とシカマルが再会してからの記憶が全てなくなっていると言うことだ。
胸の奥が抉れるように痛む。
すっかり温度の下がった指先をヨシノの暖かい手のひらが覆う。
温度が、シカマルに似ていた。
「あの、ね、きっとすぐに思い出すと思うのよ。だから・・・」
どうかシカマルから離れないでいてやって。
必死な目で見るものだから、ナルトは自分の胸の痛みさえ忘れそうになる。
自分のことをここまで心配してくれるひとなど、今まで数えるほどしかいなかった。
「思い出したときナルちゃんがいなくっちゃ、だめなんだから」
理不尽な理由であっても、言わずにはいられない。
「あの、」
「俺からも頼む」
言葉を漏らしたナルトを遮って、シカクまでもが頭を下げる。
「や、あの・・・」
「お前の性格も境遇も理解しているから言うんだ。愚息の傍にいてやってはくれないか・・・?」
「私からもお願い。もしたとえ記憶が戻らなくても、きっとナルちゃんのこと好きになると思うの」
懇願する目で見つめられ眩暈がしそだうと思考の隅で思った。
それと同時になんて幸せなことだろうかとも思った。
自分のことを想ってくれるひとがいると言う事実に涙が出そうになる。
「・・・あの、」
顔を上げ、いまだ疼く胸の痛みを抱き込んで。

「俺、頑張って、シカマルに好きになってもらいます」

にこりと、泣きそうな顔で笑うナルトは儚いながらも見惚れるほどだ。
ナルトの言葉に良かったぁ、と気が抜けて座り込んでしまったヨシノに肩を貸して。

正直不安だ。
好きになってもらうなどとよく言えたものだと自分で思う。
でも、それでも、記憶がないからはいそうですかとあっさり諦められるほど浅い慕情でもない。
確かにこの機にシカマルの元を離れようかと一瞬思いはした。
自分のせいでシカマルや彼の両親が誰かから蔑まれたり恨まれたりするのはやはり辛い。
彼らの優しさに甘えっぱなしではいけないと、思うのに。
今さらあの温度を手放すことが自分にできるだろうか。

「・・・ただ、」
呟いたナルトの声に耳を傾け、
「俺はシカマルの気持ちを優先します。だからシカマルが俺を不要と言うなら、ちゃんと離れます」
枷にはなりたくないのだと俯いたナルトを大丈夫だとヨシノが抱きしめた。
「大丈夫、きっとすぐに好きになっちゃうわよ」
泣きそうな顔で、しかし太陽のように笑うヨシノの笑顔に笑い返して。

ナルトはシカマルの病室へと向かった。























モドル