なあ
お前はどこかで生きているのか?
なんでだろう
そう思えて仕方ないんだ
予感
「金髪美人の世話」
そう言って笑うと、元アカデミーの担任は自分の腕を掴み、瞬身で火影室まで連れ込んだ。
火影はさして驚く様子もなく、イルカとシカマルを迎えた。
「綱手様、どうせ見ていたでしょうから端折りますけど、“あのこ”の世話を手伝ってもらおうかと
思っているのですが」
綱手の水晶球をちらりと見やって、確信犯ともとれる笑みで笑うイルカ。
(イルカせんせってこんなだったか・・・?)
普段はもっと謙虚な姿勢を見せるイルカを不思議そうに見つめる。
(つか、“あのこ”って誰だ?)
「まあ・・・仕方ないね。あのままぼんやりされてても困るし、正直見てられない」
「夜の任務にはいつも通り俺が同行します。シカマルにはとりあえず1週間ほど
傍にいてやってもらいたいのですが」
「お前に任せる」
淡々と自分の任務が決められて行く。
夜の任務、と聞いてシカマルが首を捻る。
イルカは教職専門だのに、夜の任務とは、人手が足りていないのだろうか。
シカマルの視線に気付いて、イルカの爆弾発言。
「あ、俺暗部もしてるんだよ」
「へ・・・」
「イルカ!!」
へらっと笑うイルカに口が塞がらないシカマル怒鳴る綱手。
「良いじゃあないですか。知っておいてもらった方が動き易いし、どうせ死の森に
1週間は缶詰めです。支障がありそうなら任務終了後に記憶操作すれば、ねえ」
それにさっき任せるって言ったでしょ?とにっこり笑うイルカに綱手が大きな溜め息を吐いた。
なんだかすごいこと言われてないか・・・?
次第に膨らむ不安感をよそにイルカがじゃあ行くかとシカマルの腕を掴み窓から飛び降りる。
後ろで綱手の怒鳴り声が聞こえた気がした。
「・・・イルカせんせー」
「ん?」
死の森に入って、枝から枝へと移り渡る。
いくつかトラップが仕掛けてあるらしく、イルカの着地する場所を注意深く覚えついて行く。
「暗部ってマジっすか・・?」
「はは、見えないか?」
全然、と正直に答えるシカマルに苦笑して。
これで暗部を統括している総隊長だと付け加えても信じてもらえないかもなぁ、と。
「あの、いったん家に帰って荷物取りに行きたかったんですけど」
「ご両親に任務のこと言っておくから、ついでに取りに行ってやるよ。表向きは“急な
大名の警護”にでもしとくかな〜」
お前も話合わせとけよ、と言っている間に2階建ての一軒家が見えた。
「こんな所に家なんてあったのか・・・」
庭まであって、花壇には様々な花が彩って。
イルカが幾つか印を結ぶと結界が揺らいで消えた。
「今の覚えておけよ。鍵代わりだから」
一歩進んで再び同じ印を組むと、空気が一瞬張り詰めたが、すぐに静寂な森の空気に戻った。
「先生、“世話”って俺、鹿の世話くらいしかしたことないっすよ?」
「お前食事できる?」
料理、と言われてまあ自分が食えるくらいには、と答える。
「それだけできりゃ充分だ」
すたすたと縁側に向かうと、向こうからもイルカが同じように歩み寄ってきた。
「ご苦労様」
労いの言葉にひとつ頷いて、影分身だったのだろうイルカが消えた。
「・・今日も変化なし、か・・・」
影分身の情報に肩を落として、シカマルに向き合う。
「なあ、お前さっき俺に仮説を話してくれたよな」
ぴんと張った空気に緊張する。
背中に何かじっとりとした熱を感じてシカマルは頷いた。
「花マルをやろう、95点」
「え?」
ニカ、と笑ったイルカに緊張していた筋肉が緩む。
「ほとんどお前の予想通りだよ。マイナスした5点は、ナルトに修行をつけたのが俺だって
ことくらいだな」
「じゃあ・・・」
あいつは・・・・・。
「ああ、生きてる」
ドクンと心臓が波打った。
久々に心臓が動いて血が流れ出したような感覚。
ああ、俺ナルトが死んだと聞かされてからずっと
死んでたのかな
「まあ、今は半分死んでるようなもんだがな」
イルカが何か小さく呟いたが聞き取れずに、シカマルは後を追った。
モドル