宙(ソラ)に堕ちて







澄み渡る青に、白い絵の具で描かれたような雲が流れて行く。
大きかったかたまりが、ちぎれて小さくなって目で追っている間に青と溶けていった。

白い雲は青に食われて消えていった。

青は、強い、な・・・


ぼんやりと、暖かな日差しを全身で浴びながら考える。
目を閉じれば、ナルトの育てた花達の匂いが鼻を掠めた。
改良したのか、花にしては甘過ぎる匂い。
甘いものが好きな奴だからな、と口元が緩む。

「何か、楽しいことでも?」
いつの間に距離を詰められていたのか、片目を開けるとナルトが自分を見下ろしながらくすくすと笑っていた。
どうぞ、と湯気の立つ湯飲みを受け取り礼を言うと、自分の隣に腰を下ろした。
夜までは表の任務もなく、2人でナルトの本宅でのんびり過ごそうかとやって来たのだ。
よろしければこちらもどうぞ、と桜を模った皿に乗った菓子を受け取る。

「お、桜餅か。作ったのか?」
「ヨシノさんに教えて頂いて一緒に作ったので味は確かですよ」
そう言えば、午前中にヨシノと2人で台所に篭っていたことを思い出す。
「お前に限っては味の心配なんかしてねえよ」
苦笑して優しい彩を口に運ぶ。
「・・美味い」
「それは良かった」
本当に心配していたのか、ほっと胸を撫で下ろすとナルトもお茶に手を伸ばした。

ゆったりとそよぐ風に瞼が下がる。
襲う眠気は連日の任務のせいなのか、甘い花の匂いのせいなのか。
「シカ」
ぽんぽんと自分の膝を叩いて微笑む金髪に誘われるように寄ると、頬に柔らかな感触。
(ナルの匂いだ・・・)
途端に増した眠気に、この甘い匂いはこいつに違いない、と半分夢の中にある理性で結論付けた。

だんだんと閉じて行く視界で、俺は意識を飛ばすぎりぎりまで見ていた。

俺だけの、空。









モドル