眠り熱
「なあ、女のどういうとこにぐっとくる?」
合同任務の休み時間。
話題はキバの唐突なものだった。
おおかた、昨夜あたりにそんなテーマを題材にしたテレビ番組でも見ていたのだろう。
今は男だけで集まって昼食をとっているが、離れたところで同じく昼食をとっていた女性軍が
微妙にこちらに意識を向けたのがわかる。
シカマルは小さく息をついて読んでいた本を日よけがわりに昼寝をすることにした。
その行動に対してキバからは文句がとんだが、めんどくせーと言ってしまえばシカマルらしいとあっさり受け入れてくれる。
興味もないし、この話題に入るのはどうかとも思ったのは、訳あって自分が女であるのに男の姿をしているせいだ。
その事情を知っているナルトはこっそり苦笑していた。
「やっぱり女性は笑顔が一番です!!」
リーが親指を立てながらキラリと言い切る。
「・・・慎ましいのが良い・・・」
こんな話題に乗ってくるとは思えなかったシノに皆が驚きつつも、大人だ・・・と尊敬の眼差しを送る。
「俺も同じだな」
言いながら無難にネジが濁す。
下手に何か言って騒がれるよりは良いと踏んだようだ。
「サスケってなんか好みってあるの・・・か?」
キバの声が裏返ったのは、遠くから送られてくるサクラとイノの熱い視線のせいだ。
「・・・別に」
「っいや!何かあるだろ!あるよなっ?!」
適当で良いから何か答えてくれ、と小声で震えながら涙目で言われては、サスケであっても何かしてあげなければ
と言う気持ちにもなる。
「・・・少し生意気で明るいやつが良いな・・・」
何故自分に熱っぽい視線を送ってくるのかわからず、ナルトが身じろぐ。
遠くで、サスケ君はツンデレ派ね!!と聞こえた気がした。
「僕はやっぱりよく食べるコが好きだなー」
期待を裏切らない答えにチョウジっぽいなーと笑う。
「そういうキバはどうなの?」
こんなことを言い出したからには何か言いたいことがあるんでしょ?とお菓子への手は止めずチョウジが問う。
「やっぱこう胸のおっきいやつ!」
こう、と手で胸のあたりをジェスチャーで伝えるキバに、たいした答えではなかったなと、若干そんな気もしていたと
がっかりした気持ちで見つめる。
「なんだよー、男なら思うだろ?ナルトならわかってくれるよな?」
「ほぇ?」
何で自分に振るのだと首を傾げる。
「だってお前のお色気の術って、あれお前の理想だろ?」
「えっ・・・」
必死で同士を探すキバには悪いが、キバが昔、道端で拾ったと興奮しながら持ってきたエロ本にあったものを
ただ見本にしただけのものなのだ。
本に載っている女性達は総合的にああいう体型が多かったので参考にしただけ。
「えーと・・・」
表用の“ナルト”であればこの場合「当たり前だってばよ!」とでも言う方が自然なのだろうが
今は傍にシカマルがいる。
寝たフリを決め込んではいるが、起きているだろう。
あまり適当なことは言えない。
「なんだよ歯切れ悪いぞ!じゃーお前はどんなコが良いんだよっ」
もういい、と拗ね気味なキバに、どうしようかと困った表情を見せるがこんなくらいじゃ引いてはくれないだろう。
ちらりと、隣で本を顔に置きながら眠転がっているシカマルに視線を向ける。
「・・・髪が長くって」
窓辺で少し伏せ目がちに本読んでいる姿がきれいです
「優しくて」
いつも気遣ってくれる優しいひと
「俺のこと好きだって思ってくれるコ!」
あなたが大好き
ニカっと笑ってそう言ったら、ちょうど昼休み終了の合図。
皆ばたばたと午後の任務の準備に取り掛かった。
いまだ隣、本の下で眠る恋人を覗き込み、
「・・・午後の任務、始まりますよ?」
素の話し方で静かに笑う。
「・・・わかってる、先に行ってろよ・・・」
顔を背け、本を落とすシカマルの耳は紅かった。
はい、と苦笑して皆の元へ走って行く金髪の背中を紅い顔で睨んでやる。
言葉の合間に流れて来た心話。
時折、無邪気に愛を語る恋人に頭が痛くなるが。
ひとつの苦笑で手を打ってやろうと歩き出した。
モドル