シカ♀×スレナル
シカマルが女だと言うことは既に皆承知済み、という設定で。
苦手な方は
コチラ
から戻ってくださいね(>_<)
大丈夫な方だけお進みください。
膝に残る記憶
「これは一体、どういう経緯で・・・?」
ひとり遅れて参加したシカマルは、目の前の惨状を見るだけで何となく状況が理解できてしまったが
あえて質問を投げた。
応えは返っては来なかったが。
ことの始まりは、約2時間ほど前に遡る。
この日は中忍・上忍になっていそがしくなり、なかなか会えなくなってしまった同期達が、
久々に会わないかという話になり開かれた飲み会。
皆すっかり落ち着いて、幼さはなりを潜め、穏やかな会話を初めはしていたのだが。
時間が経つにつれ話も気分も盛り上がり、どこの子供が騒いでいるのかというほどの騒がしさになるのに
一刻もいらなかった。
「あれぇナルトぉ、お前ちゃんと飲んでんのかぁ?」
頬を真っ赤にさせて一升瓶を手にしてキバが絡んでくる。
「飲んでるってばよ!」
足に力が入らないのか、しな垂れかかるように肩を組まれ、無遠慮にかかる体重によろめきながらも
ナルトは酔っ払った友人を支え宥める。
(飲みすぎですよっ・・・重っ;;)
本格的に寄りかかってくるキバに、ナルトは壁に背を預けて耐える。
幼い頃から猪鹿蝶の晩酌に付き合ってきたナルトは酒には弱くない。
既にキバ以上に飲んでいたが、飲み始めた頃とあまり外観は変わっていなかった。
「あらナルト、あんたお酒強かったのねぇ」
ほんのり朱に染めた頬でサクラがもう一杯どぉ?と注いでくれようとした。
するとカカシが間に割り込んで、
「ぢゃあ〜俺のとっておき飲んでみてよ〜」
既に呂律も回らなくなりながら、ナルトのグラスに焼酎をなみなみ注いだのだ。
何やら高そうなラベルと、よく見ると金粉らしき輝きを透明な酒の中に認め、ナルトは眉を寄せた。
「このお酒・・・」
確か綱手が持っていたような。
「んん〜??あ、これぇ?なんか、綱手様のところにぃ〜あったから」
拝借してきちゃった☆てへ、と首を傾げた大人に少々頬を引き攣らせながら、グラスとカカシを交互に見つめた。
絶対後で殺される。
でも既に開封されているし、持ってきたのはカカシだし。
飲め飲めと催促してくるのもカカシ本人だし。
口元にグラスを寄せると、精錬で爽やかな香りが。
「・・・」
(ま、いいか)
どうせこの泥酔っぷりだと、記憶など微塵も残らないだろう。
綱手から拝借してきたという事実だけ聞かなかったことにしよう。
ナルトはにっこりカカシに笑って礼を告げると、注がれた酒を煽った。
ナルトの様子に変化が現れたのは、カカシに酒を勧められたてから間もなくであった。
「ナルトー」
辺りの食べ物をすっかり食べつくして、チョウジがナルトのところへやってきた。
ぼんやりと、酒によって濁った蒼で、チョウジを見つめる。
「・・・ナルト?酔ってる?」
「は、ひ?酔ってませんよぅ」
「・・・」
いや、完全に酔ってるでしょ、口調変わってるし。
出そうになった言葉を飲み込んで、もっと飲んで飲んでとナルトのグラスが空になるたび注ぎ続けるカカシに視線を移す。
いつもしているマスクは首元に落ちていて、時折訳もなく笑い出す。
カカシの持つ瓶のラベルを見ると、アルコールの度合いが結構高かった。
しかし、先ほど見ていた限りではナルトは酒に強かったように見えたし、この程度で酔うとは思えなかった。
そしておかしななことにバーコードがない。
「・・・げ、」
製造元:医療科学班。
「カ、カカシ先生!!これ、どっから持って来たの!?」
「ぇえ?綱手様のところに、あったんだよ〜」
へらっと笑うカカシを放って、ナルトの肩を揺さぶる。
「ナルトナルトっ吐き出して!今カカシ先生からもらったお酒、全部出して!」
やばい、絶対やばい。
何故酒瓶に入れたのかは知らない、もしかしらた潜入捜査などに使用するつもりだったのかもしれない。
でもからだには良くないシロモノには違いないだろう。
「ほぇ?やーれすよぅ、むりれす」
既に殆ど飲みきって、ナルトの呂律は更に悪くなっていた。
「なになに?どしたの?」
幹事役のイノが妙な雰囲気を放つ騒ぎに目をつけ、寄って来る。
「どぅも、して、ません、よぅ」
チョウジに揺さぶられて紅い頬で笑うナルトに、イノはおかしな焦りを感じた。
「や、どうもするわよ。あんたべろべろじゃない、ちゃんと加減して飲みなさいよ」
こっち来て寝てなさい、と座布団で作った簡易な寝床に引っ張って行かれる。
「おぃ、どこ行くんだよぉ」
眠っていたキバがいつの間にか目覚めて、ナルトの背後から抱きつく。
その体重に足元の覚束なかったナルトは容易く倒れ、強かに額を打ちつけた。
「いっ・・・にゃぁあ」
「あ、悪ぃー」
とても罪悪感があるとは思えない態度で、キバは額を押さえ呻くナルトからのそのそと退こうとした、が。
痛いと涙を蒼に溜めて酒のせいとはいえ頬を紅く染めた姿に、その動きはぴたりと止まった。
白く浮いた肌も今はほんのり紅く染まり、いつもは感じない色香に思考が溶ける。
無意識に伸びた手は、倒れた際に捲れ上がったナルトのシャツの中に這わされ、その感触に驚いてナルトは瞬いた。
「ふ、え?」
くん、と首元に鼻を埋められ、擽ったさにナルトは身を捩った。
「はぁ、いーにおぃ・・・」
「ぅ、うーっうーっ」
覆いかぶさるように、自分よりひとまわり大きな体躯を押し退けようと金髪は奮闘するが、今はアルコールのせいで上手く力が出ない。
「ちょ、ちょっとキバっ何盛ってんのよーっ」
キバの行動に焦ったイノがキバを剥がそうとパーカーのフードを引っ張るが、意外な重さに難儀する。
「あれあれ、なになに〜?」
こちらも負けないくらいに酔っ払ったいい大人が騒ぎを聞きつけ千鳥足でやって来る。
「あ、カカシせんせー手伝って!!」
「ん〜?あ、楽しそう〜俺も混ぜて混ぜて〜」
「はぁ!?」
駄目な大人のせいでイノの苦労が二倍になった。
しかし困ったのはナルトの方も同じである。
「ぅあっ?」
頭上から覆い被さったカカシにべろりと耳のラインを辿るように舐め上げられ、仰け反った白い首にはキバが同じように舌を這わす。
「ちょっとちょっとー!!」
もうイヤ何この男達!!この際もう何だってアリよね!そう結論づけたイノが目を据わらせ印を組み始めたとき。
「イノ、ちょっとどいてろ」
冷ややかな、声が。
「え?」
ヒュ、と空を裂いた鋭い音に続きドカァッと響いた轟音。
振り向くと、同じく目を据わらせたシカマルが蹴りを入れた格好で吹っ飛ばされた2人を見据えていた。
「ちょっと、見えてる見えてる」
珍しく短いスカート姿のシカマルに、イノが捲れたスカートをぐいぐい直していた。
「構わない」
「構え!!」
良い加減女の子の自覚を持って!本人の代わりに頬を赤らめてイノがたしなめるが、
シカマルの意識は既に倒れて周りの状況を飲み込めないナルトの方へ向いている。
「ナル、大丈夫か?」
「んぅ、ひゃい・・・」
とろりと眠たげな蒼でシカマルを見つめるナルトに眉を寄せる。
(おい、素が出てるぞ)
いつもの敬語が出ている、とそっと耳打ちすれば、はひ、とアルコールに溶けた顔で笑った。
(・・・?酒には弱くなかったはずだが・・・)
見渡すと、チョウジがコレ、と持って来た酒瓶を見て溜め息をひとつ。
そう言えば、さっき報告書を綱手に持っていったとき無くなったと騒いでいたがコレのことか。
「コレってなんなの?」
おかしな酔い方をしているナルトに水を手渡しながら、イノが訝し気に瓶を見る。
「あー・・・何でも、策謀に使う試作品だとか。焼酎並みのアルコールで、酔い易さは高い。
少し自白剤も入ってるって言ってたような・・・」
実はその他もろもろ入っていたような気がするが、何しろ試作段階のシロモノなので効能は推して知るべしである。
「コレ持って来たのは?」
「カカシ先生」
「わかった」
一瞬だけ、ちらりと視線を投げてシカマルはナルトを介抱するために近寄る。
その一瞬見えた殺意に、イノとチョウジはカカシに静かに手を合わせた。
半刻後、シカマルの飛ばした式によって知らされた報告に綱手が動き、白衣を着た忍数名がカカシをどこかへ連れ去った。
どろどろに酔ったナルトを膝に乗せ、シカマルはいまだ騒ぎ続けている仲間達から離れた窓辺に背を預けている。
「大丈夫か?」
「らいじょーぶれすよぅ」
金髪を梳いてやれば、心地良さに細められる蒼に自然と笑みが漏れる。
ナルトも、柔らかな素足に満足なのか、太股を抱き枕のようにして身を預けている。
「しかぁ」
「・・・なんだ?」
蕩けた蒼が向けられる、それは少なからず快感を伴った。
にこり、と無邪気な笑顔。
「ん、すきぃ」
「・・・」
「すき、すき、らいすきしかぁ」
「・・・、ちょ、」
「すきれす、いっぱぃすきれす」
「・・・」
拙い拙い愛の言葉。
それでも、シカマルには効き過ぎる媚薬のように脳に響く。
普段は恥ずかしさからあまりもらえない、手放しの愛に、どう受け取って良いものかわからない。
「・・・俺、だって」
お前に負けないくらいに・・・。
「あらー、あんた良いことしてもらってんじゃないー」
借りてきた毛布をナルトにかけるイノに、シカマルはぎくりと肩を揺らす。
ニヤリと笑うイノに、ナルトはシカマルの太股を抱く力を強めた。
「らめ」
「ん?」
「しかはおれのなんらからぁ、らめれす」
あげません、と足をぎゅうと抱きしめるナルトに、
「盗らないわよ」
苦笑してそう言ってやれば、ナルトは満足したのかすぅと眠ってしまった。
残されたのは、真っ赤に微妙な顔したシカマルとニヤニヤと微笑むイノ。
「このこと、ちゃんと覚えてたら面白いわよねー」
ふふふと不敵に笑うイノに、シカマルはついと外の夜景に視線を流す。
「覚えてなくて良い」
俺の記憶にそっとしまっておこう。
大事な大事な拙い愛を。
モドル