こちらでは死ネタ及びやや残酷シーンを含みますので、
嫌悪感がある方は コチラ から戻ってくださいね(>_<) 大丈夫な方だけお進みください。



やっと手に入れたお前を


誰が手放してなど




やるものか





・・・ずっと









日差しの強い、けれど冷たい風の吹く日だった。
夏の名残で日中はじわりと汗が滲むが、日が落ちてしまうと窓を開けて寝れば
風邪を引くくらいに気温差が出てきていた。

「もう秋なんだな・・・」
「そうですね」
ぽつりと小さく洩らした言葉を耳に拾って、ナルトが笑った。
・・・かわいい。
女である自分が言うのも何だが、かわいいと思ってしまうのだから仕方ない。

本日は7・8・10班の合同任務。
どこぞの大名夫人が失くしたアクセサリーを探すというもの。
2人ペアで散らばって探していた。

あたたかい風が頬を撫ぜる。
「・・・・・・?」
シカマルは何故か静かな不安を感じた。
季節が変わるとこんな気分になるのだが、今回はどこか感じが違う。
「どうかしましたか?」
急に黙ったシカマルを危惧してナルトが心配そうに覗き込む。
何でもない、と首を振って笑おうとして、

何故か笑えなかった。


「シカマル?・・・!」
呼びかけて、急に顔色を変えたナルト。
「何者かが凄いスピードでこちらへ向かっています」
「え?」
「すみません、油断していました」
気配を探ると言って数を確認し始めたナルトの顔が曇って行く。
こんなに近くに来るまで気付かなかったとは・・・あちらもかなりの手練のようだ。
今から向かっても全員を食い止められる可能性は低い。
それならば迎え撃つ方が勝算が上がる。
カカシ達では手に余るだろう、その時は自分が何とかするしかないが・・・。
すぐ傍にある別の気配に気持ちだけ向ける。
上層部から依頼されている自分の監視役。
いつもは一人なのに、今日は何故か数人。
ひっそりと上手く気配を消しているようだが、と訝しげに眉を顰めた。

嫌な予感がした。

(まさか・・・)

一縷の予想。

「ナル・・・?」
心配そうに見つめるシカマルの手を握って。
大丈夫です、と笑って近付いて来る気配の方向をじっと見つめた。


「皆、集まって!!!」
紅の叫びのような呼び声に子供達が集まる。
「先生?」
「結界を張るわ!そこから決して出ないで!!」
キンと音を立てて紅の結界が張られる。
何なの?と不安を隠せない子供達を護るように上忍が囲む。
数分もせず現れたのは暗部のような黒装束に身を包んだ他国の忍達。
ざっと20人はいる。
額宛はしておらずどこの忍かは不明だが、気配からして上忍から暗部クラスだろうと予測する。

「ほお、これはこれは・・・名家が勢ぞろいで」
思っていたよりも多かった、と言いたげな言い回しにナルトが眉を顰めた。
やはり誰かが情報を流したようだ。
おそらくは、今日合同任務があり、名家の子供達が揃うとだけ聞いたのだろう。
(嫌な予感が当たりそうですね・・・)

「子供達を大人しく渡せば、あなた達は半殺しで見逃してさしあげますよ」
リーダーらしき男が一歩前に出て笑う。
「馬鹿言うんじゃあないよ」
カカシの言葉を合図に大人達が動いた。

繰り広げられる戦闘に、結界内で大人の無事を祈る子供達。
加勢したいが、足手まといになるのは見ていて判ってしまう。
そして力の差は歴然としていて、どんどんカカシ達のからだに傷が増えて行く。
敵は殆ど無傷に近く、もう長くはもたないことを確信して、先ほどのリーダーらしき男が結界に近付いて来る。

「ナル・・・」
微かに指先が震えているのを感じて、そっと握り返してやる。
それだけで少しは安心できたのか、小さく息が漏れた。
そんな姿が愛しい。
「シカ・・・行ってきます」
他の下忍たちがいると言うのに素の口調に戻したナルトに驚き振り向く。
案の定、雰囲気の変わったナルトを困惑した表情で見つめている。
「ナル・・・」
何を迷うことがあるのだろう。
一番大事なものはここにあるのに。
自分のことばかり考えていたことを恥じた。

「シカ聞いてください」
きゅっとシカマルの手を握ったまま。
「俺は木の葉から離れることができません。九尾は土地神なので離れれば木の葉が滅びますから」
「は・・・?」
意図の見えないナルトの言葉にシカマルは首を傾げる。

正体がバレたら里抜けすると自分が考えているのだろうかと思って。
「大丈夫、こいつらはお前を受け入れてくれる」
だから心配するな、と笑ったが、ナルトは困ったような顔をした。

敵はすぐ傍まで来ていた。

「俺はあなたを愛してます」
「は・・・」
突然の告白に頭もからだもフリーズした。
シカマルは首まで真っ赤だ。
「ちょ、ちょっとナルトあんたこんな時に何言ってんの!?」
もう口調とか雰囲気の問題ではなく、今にも倒れそうな担当上忍を目の前にしてのナルトの台詞が
問題なのだとイノが怒鳴った。
「イノ」
「っ・・・何よ!!」
いつもの元気な感じではなく、静かに呼ぶナルトの声にどきりとする。
「シカをお願いします」
「はあ?」
丁寧に頭を下げたナルトに間の抜けたイノの声。

そして結界を強制解除し、新たに高度な結界を施す。
下忍では、ましてやドベのナルトでは到底できない高度な術に子供達は驚愕に満ちた表情で
目の前の金髪を見つめる。
傍まで来ていた敵が、ほお、と面白そうに笑った。
手足のリーチのハンデを考え、緋月の姿に変化する。
面は腰に下げたまま、ポーチひとつの黒い身軽な暗部服。

敵と応戦していた上忍達もナルトの暗部姿に驚きを見せた。
「あれって、緋月・・・?」
暗部の任務で何度か一緒になったことのあるカカシが呟いた。
「緋月って、総隊長の次に強いとか言われてる・・?」
紅の言葉に、聞いたことある、とアスマが応える。

いつの間にか手に銀線を絡ませ、ふっと消える。
それに合わせて敵も動いたが、すぐに止まって動かなくなった。
一拍おいてパズルのようにばらりとからだが離れ蒼い炎に包まれて行く。
その横に音もなく降り立つ暗部。
銀線を一振りして血を払うと、残りの敵にからだを向ける。
一瞬で決まった勝敗にリーダーを失った配下達がカカシ達を放ってナルトへと襲い掛かったが、
あっと言う間に勝敗はついてしまった。

周りには蒼い炎が残るのみ。
それも全て焼き尽くすと、何もなかったかのように消えて行った。
それを見て何故か胸がざわめいたシカマルは、自分でも気付かないうちに胸を抑えていた。
(ナル・・・?)

「大丈夫ですか?カカシ上忍、アスマ上忍、紅上忍」
近付き傷の具合を見て治癒して行くナルト。
「すげぇな、医療忍術も使えるのかよ・・・」
感嘆したようにアスマが笑う。
それに苦笑で返して、変化を解くと子供達を護っていた結界も解いてやる。
「ほんとにうずまきなの・・・?」
いまだ信じられないと紅が傷跡さえ消してしまったナルトを凝視する。

「ナル!!」
聞こえた愛しいひとの声に振り向いて、安心させるように薄く笑う。
「ナルトすげーじゃん!」
「ほんとに暗部?」
子供達は次々とナルトを称賛し近寄って来た。
大人達はその子供達の柔軟さに見習わなきゃならないな、と苦笑して自分達もナルトの元へ向かう。

「近寄るな」
ナルトの周りを見知らぬ暗部達が囲む。
ナルトに近寄るのを阻まれ、胡乱気な視線を向ける。

ナルトは、やはり、と悪い予感が当たったことに視線を落とした。

「うずまきナルト、お前は今から我々の監視下に置かれる。抵抗は許されない」
淡々と言い放ち、乱雑にナルトのからだを拘束する暗部。
「ちょっとっ何なのよあんた達!!」
喚くイノをチョウジが抑えながら、しかし急に現れた暗部を皆胡散臭げに見やる。
「俺達もどう言うコトか聞きたいんだけど?」
傷が癒えたカカシ達もやって来た。
「こいつの腹にはこの里を襲った九尾が封印されている。とても危険だ。忍になっても
これまで万年ドベの下忍であったから見逃していたが、暗部の緋月がこいつであると言う情報が入った。
そして見張っていれば今日のこの事件だ。お前達も見ただろう」
見下したように嘲笑う暗部を子供達が睨む。
「この力は里の脅威になる。今の内に始末しなければならないのだ」
始末、と言う言葉に皆その暗部を凝視した。
「始末、て、何だよ・・・」
暗部の胸倉を掴んで睨むシカマル。
「上層部が決めたことだ。決定しだい数日後には処刑・・・」
「てめっ・・・!!!」
殴りかかったシカマルを瞬身で避け、ナルトの腕を拘束する。
「こいつを庇い立てすると、お前達も狐の手に落ちた者として処分されるぞ」
冷たく笑う暗部。
(こいつ・・・!)

自分達が人質になればナルトが逃げないのを知っているのだ。

「俺の監視役だと思っていましたが、あなた達はもしもの時のための保険だったんですね。
俺が彼らを仕留められなかった場合、及び正体を明かさず子供達を奪われそうになった場合の」
それまで黙っていたナルトが口を開く。
「彼らが来ることをあなた達は知っていたのではないですか?」
それを知っていて泳がせておいたのだ。
ナルトの言葉に暗部達は僅かに視線を彷徨わせた。
「全てお前の推論だ」
冷たく言い放ち、行くぞ、とナルトの腕を取り、暗部達は瞬身で消えた。
「ナルっ・・・!!!」
伸ばした腕は空を切って。
シカマルは唖然とナルトのいた場所を見つめた。
様子がおかしかったナルト。
きっとこうなることに気付いたのだ。



―――――俺は木の葉から離れることができません

―――――あなたを愛してます



自分達が人質になってもならなくても、ナルトは処罰を甘んじて受けるつもりだったのだ。
だからイノに自分をお願いしますなどと言った。
死ぬ、つもりなのか・・・?

「ナル・・・」

涙が伝った。




翌日、早くもナルトの処刑通達が行われた。
明日には、公開処刑だと聞いた。
それを朗報だと里人は喜び、祭りのように里は賑やかだった。
その様子を見ていたシカマル達は暗い表情で睨むように見つめる。
「何なの、あれ・・・」
「・・・ひどい」
「俺達にできること、ねぇのかな・・・」
沈黙が広がる。
自分達の力でどうにかなるものではないことくらい、判っているのだ。
それでも、諦められない。
俯く子供達の元にシカマルとチョウジが遅れてやって来た。
「・・シカマル、どうだった・・・?」
「駄目だ。見張りが半端ない」
ナルトの捕らわれている場所には、周囲200Mは見張りで囲まれていた。
せめて様子を知りたかった。
「せっかくシノが調べてくれたのにな・・・」
居場所だけは、赤丸とシノの蟲で突き止めたのだ。
「そうよっ大丈夫!!」
「・・?何だよイノ」
急に立ち上がったイノを見上げシカマルが首を捻る。
ちょうど目の前をうろついていた野良猫をひっ捕まえて、意識を手放す。
慌てて抱きとめて、野良猫はこちらを一度振り向きナルトの居場所に向かって走って行った。
「心転身か・・・!」
なるほど、と猫を見送る。

見上げた空は彼の目の色をしていた。


一方イノはすんなり中に潜入成功し、ナルトの元へ向かう。
ちょろい、と笑って猫ならではの跳躍でひらりと細い塀に登り走って行く。
廃墟だったビルをそのまま使っているらしく、外装も内装もぼろぼろで。
窓ガラスさえはまっていない。
「!」
ぴたりと止まって流れて来た血の匂いを辿る。
しだいに濃くなる血の匂いに不安が募る。
ゴ、と鈍い音が聞こえた。
通り過ぎそうになった音のした部屋に戻って硬直した。

(ナルト・・・!)
ぢゃらり、と小さく音を立てて鎖が揺らいだ。
両手を天井から繋がれた鎖で拘束され、吊られたからだ。
服はぼろぼろで、見えている肌はどこもかしこも青痣と血塗れで傷だらけで。
いつも太陽のように煌めいている金髪さえ血で汚れていて。
今は気を失っているのか俯いていて表情は見えなかった。
(何よあれ・・・まさか昨日からずっとあの状態な訳・・・!?)

「何気失ったフリしてんだよっ」
前髪を鷲掴みに上向かされ、小さく呻く声に気を良くした暗部。
昨日ナルトを連れて行ったやつだと気付く。
ナルトがこちらに気付く。
血に濡れた前髪から蒼が覗いた。
「っ・・・」
ひ、と息を呑んだ。
片方の蒼が、なかった。
涙みたいに血が頬を流れていて、まだ時間がたっていないのかぽたぽたと顎から血が床に落ちている。
(イ、ノ・・・?)
覚えのある僅かなチャクラに気付く。

「ん?なんだ?」
拷問をしていた暗部が異変に気付く。
ナルトの視線の先に気付いて目をやると、こちらを見つめる野良猫。
「何見てんだよ・・・」
睨むように見つめる猫に気を阻害され、ホルスターからクナイを取り出す暗部。
がつっ。
クナイを投げられる前に暗部の鳩尾に蹴りを入れた。
逃げて、と唇が動いたのを読んで自分のために気を逸らしてくれたのだと知る。
「っ・・・!!このっ・・・」
仕返しとばかりに腹を蹴りつけ、項垂れた頭を無理矢理持ち上げる。
残った蒼で睨みつけるナルトに持っていたクナイをひたりと当てた。
「どうせ処刑時は目隠しされるんだ・・・そんな目要らねえよな・・・」
クク、と喉で笑って。

ずくり、と肌にクナイが沈んだ。



「きゃあぁあぁああああ!!!」
術を解除して自分のからだに戻ったイノ。
「イノ!?」
サクラとシカマルで発狂して叫ぶイノを押さえつける。
「落ち着け!どうした!?」

「っぅ・・・うぇ・・・」
泣き腫らして少しずつ言葉を紡ぐイノを囲み、状況を知る。
悲惨な情報に皆の顔色が悪くなって行く。

「・・・悪かったな、こんなことさせて・・・」
落ち着くまでずっと背を撫でていたシカマルに、いいの、と首を振った。
その後は皆、黙ったまま何ができる訳でもなく佇んでいた。
そしてふと、シカマルが沈黙を破った。

「なあ、皆・・・」



「頼みがある」







その日は朝から冷たい風が吹いていて、まるで秋を通り越して冬が来てしまったのかのようだった。

「・・・シカマル、行くの?」
普段と変わらぬ口調で母が問う。
「行く。ごめん・・・」
「良いのよ、あんたがそうしたいなら。父さんには母さんがついてるから心配しないで」
幼い頃のように頭を撫ぜて母は言った。

広場には里中の人間が集まり騒がしい。
シカマル達はその中を潜り抜けながら最前列に向かう。
楽しそうな声に憎しみが沸き立つ。

シカマルは珍しく膝まであるコートを羽織っていた。
大きめなのかからだがいつもより小さく見えた。
それもそのはず、今は変化せず本来の女の姿だからだ。
精神的にやられてしまって、変化が続かなくなっていたのだ。
声もやや高く、顔立ちもいつもより線が細くなっていたが、皆気持ちの余裕がなく気付かなかった。
気温も低いこともあって、コートを着ても違和感がなかったのもある。

3代目火影が奥に小さく見えた。
苦い表情で俯いたまま。
何もできないのは自分達だけではないのだ。
彼の死を望む者が多過ぎるのだ。

ざわり、と空気が動いた。
歓喜の声が周りで響いた。

「ナ、ル・・・」

後ろに手を括られ、目には包帯を巻かれ、黒い簡易な暗部が着るような上下に足は裸足のまま。
覗いた肌には暴行の跡が生々しく残り、黒地でわからないが血も流れているようだ。
服が肌に張り付いていた。
九尾の治癒が追いついていないということは、ついさっきまでずっと暴行は続いていたのだ。


ナルトの登場に里人達が沸き上がる。
殺せ、と呪文のように繰り返される。

これから公開処刑を行う、と昨日の暗部のひとりが高らかに宣言する。
更に広場は沸き上がった。

すらり、とその暗部の背と同じくらいある刀が振り上げられる。
振り下ろされた切っ先は、がつ、と地面だけを抉った。

「どういうつもりだ・・・?女・・」
面の奥でぎらりと暗い眼光が睨む。

睨んだ先には、切られるはずであった子供を大事そうに抱える黒髪の子供と、彼らを護るように囲む子供達。
女、と言われて子供達は中心にいるシカマルを振り返る。
苦笑してコートの前を肌蹴て、わり、と謝る。
「あんた女だった訳・・・?」
「ごめん」
なんだか色々あり過ぎて驚けないからもう良いわー、そう言ったイノに皆頷いて笑った。

「・・っ・・シカ・・・!?」
馴染んだ気配にナルトが驚く。
そして自分の周りにある気配が誰なのかに気付いてシカマルを仰ぎ見る。
「ナル・・・」
血の滲んだ包帯に口付けて。
拘束されていた腕の縄を解いてやって。
「シカ・・・皆も、何して・・・」
「皆で決めたんだ」
ここで懇願してたとえナルトが処刑を免れてもいつかまた同じことが起きるかもしれない。
いくらナルトが強いからと言って、目を失いぼろぼろのからだのナルトを連れての里抜けは難しい。
何より木の葉の地を離れることをナルトは望まない。

「俺が、お前を殺してやる」

せめて自分の手で。

「シ、カ・・・?」
「見届けて、俺達も一緒に逝く」
「シカ!!皆も・・・やめてください・・!」
こんなの望まない。
自分のために誰かが犠牲になるなどと言うことは。

「だったらわかるだろ」
俺達だって同じ気持ちなんだって。
本当は、俺だけのはずだったんだけどな、と伝えて。

「俺を残してなんて逝くな・・・どうせお前いなくなったら俺死んじまうって・・・
それなら一緒に死んだらずっと一緒だろ」
「・・馬鹿です、シカ・・・」
言い出したらきかないことを知っている。
自分を大事に思ってくれていることを知っている。
ひどいことを思っているという自覚はある、けれど。
なんて嬉しいことを言ってくれるのだろう。
震える腕をシカマルの首にまわす。

「告白したとき言ったろ」

抱きしめ返して痛覚を切ってやる。
急に引いた痛みにシカ?と首を傾げるナルトに大丈夫だと頬に口付けて自分の痛覚も切った。

他の子供達は既に同じように痛覚を遮断していた。
医療と薬品に長けた奈良家だ。
これくらいの知識はある。

そっと蒼い炎を落とした。
忍が死体処理に使う炎。
舐めるように人間のみを焼き尽くす蒼は、まるで腕の中にいる彼の目のよう。

そう思って子供達は笑った。

「俺、ナルトバカなんだって」

蒼い炎が一度大きく舞い上がり、静かに消えた。

跡にはまるで何もなかったかのように。



遠くで狐が一匹、鳴いた。















モドル