拙い表現ながらも明らかな性的描写が含まれますので、嫌悪感がある方は
コチラ から戻ってくださいね。大丈夫な方だけお進みください。




「んん…!」
息苦しさに、力の入らない腕で覆い被さる相手の胸を押す。
「鼻で息継ぎ、しろって」
ほら、と唇を舌で舐められ、噛みつくように塞がれる。
「ん、ふ…ぅ…」
ちゅっと響くリップ音に金髪の頬が更に羞恥で染まる。
上着を敷いた上に押し倒され、中に着ていたシャツは鎖骨あたりまでたくしあげられ、
ズボンはかろうじて足首にひっかかっている程度。
外気に晒された肌を、黒髪の手が這う。
そのたびに揺れるからだに、黒髪は嬉しそうに笑う。

(どうして、こんなことになって…)

いるのだろう。
もう思考もぼんやりと膜が張って、与えられる快楽だけをからだが追って行く。

見上げた空には、月が淡く光っていた。




望むもの【2】







「はあ…」
大きく溜め息をひとつ吐いて、ナルトは項垂れた。
大きな樹の幹に凭れながら、生い茂る木々の間から見える星を見つめる。
ここは里人であれば誰も立ち入ることのない、死の森の入口。
合同任務の後、逃げるようにして出て来てしまった。
自分の中だけで、さよならもした。

もう、皆とは会わない。
下忍としての、”ナルト”を消すのだ。

長期任務でも与えてもらったことにして、里外で殺されたとでもしてもらえばいい。
未練がないと言えば嘘になるが、叶わぬ希望なら、持っていても後になって自分が苦しいだけだ。

「もう、いい…」
泣き疲れて、このまま眠ってしまおうかと思った。
もうすぐ夜の任務があるけれど、からだが動かない。
ただぼんやりと悲しみに身を沈めてしまえる感覚に酔っていたのかもしれない。

すごく、誰かに甘えたい。
子供がしてもらうように、頭を撫でてもらったり。
抱きしめてもらったり。

そんな経験なんて、数えるほどしかないけれど。
今は亡き3代目と、猪鹿蝶にイルカが、時折、父親代わりのようなことをしてくれた。
思い出して、ふ、と微笑む。

(ああ、そうだな…)
もし、シカマルがそんな風に触れてくれたらきっと、
「幸せだろう、な…」
膝を抱えて、目を閉じる。
「シカマル…」

「なんだよ」

思わず漏れた呟きに返ってきた返事に、ナルトはいまだぼんやりとした表情で、顔を上げた。
視線の先には、月の光を浴びて肩で息をする、シカマルの姿。

「なんて顔してんだよ」
苦笑して近づいて来る、大好きなひと。
目を見開いたまま自分を見つめるナルトの頬を、手のひらで撫でる。
「…泣いたのか?」
涙の痕を指でなぞり、屈んで視線を合わせる。
「シカマル…ほん、もの…?」
ことりと小首を傾げて問うと、
「幻だと思ってんのか?」
くしゃりとやわらかな金髪を撫でてやると、気持ち良さそうに蒼を細めた。
その表情に、シカマルの鼓動が跳ねる。
「っ…隣、いいか?」
「ん…」
ナルトの横に座り、様子を窺い見る。
膝を抱えて、背中を丸める金髪は、言葉少なに俯く。
なんだかいつも以上に、小さく見える。

「なぁ、大事な話があるんだけど」
「うん…?俺なんかに…?」
不思議そうに見上げる蒼に、なんかとか言うな、と窘めて。

「お前…消えるつもりなのか…?」
シカマルの言葉に、ぴくりと蒼が瞬く。

―どうしてシカマルに伝わったのだろう。

今なら言葉にせずとも、何でも通じ合ってしまえる。
そんな不思議な感覚があった。

「…そうだとしたら、何…?」
ひたりと合わせた蒼は、冷ややかにシカマルを映す。
関係ない、そう言われているようで、シカマルは胸が痛かった。
すうと大きく息を吸って、
「消えてもいい」
シカマルの言葉に、蒼が悲しそうに揺れた。
その表情に、シカマルは、違う、と首を振る。
「お前がそうしたいのなら、すればいいってことだ。
俺が勝手にお前を追いかける…緋月」
予想していなかった呼び名に、ナルトは驚き、思わず距離を取ろうとして失敗した。
シカマルの影が、自分の動きを捉えていた。
「逃げんな。緋月としてのお前を、俺、少し知ってんだよ。
ちょっとだけ、話を聞いてくれないか」
ぎゅうと上から包むように握られた手のひら。
「…は、い…」
逃げない、と俯きながらも頬を染めるナルトに、縫い止めていた影は解除した。
口調も本来のものに戻した。

シカマルは片手で印を結んで、変化した。
髪だけ首元で結んで下げているだけの、20代に変化した姿。
蒼が見開く。
「…黒月…」
呼ばれた名に、シカマルは嬉しそうに笑った。
「この姿では数回しか会ってないのに、よく覚えてたな」
「ぅ…えっと…はい」
「なんで?」
単に覚えが良かっただけ?
ちょっとした期待が膨らむ。
「…シカマル、成長したら…こんな感じかな、て…思って…」
覚えてました、と顔を隠すように俯いた。
「あと…ここ2年くらい、俺の戦略…黒月、が…」
知っていたのか、とシカマルは素で驚いた。
確かに、緋月の戦略は全て黒月が立てている。
戦略書のサインに黒月のサインが入っていたから、覚えていてくれたのだろうか。

戦略部に入った際、大抵の場合、新人が下忍の戦略を立てる。
比較、簡単な任務が多いため、まずはそこから始めるのだ。
入ってすぐに頭角を表したシカマルは、新人ではあったが、
単独任務が多く、あまり戦略に頼らない緋月の戦略を任せられるようになった。
任務のランクは高く難易度もそれなりだが、たとえ多少戦略に不備があっても、
緋月の腕なら、なんとかするであろうという長のはからいであった。
奇跡のような偶然にシカマルは縋った。
もともと戦略など必要としていなかった緋月は、
しかしシカマルの立てた戦略に非常に忠実に動くので、多少の不備さえ許されず、
シカマルは今でも慎重に作っている。
緋月の戦略を、他の者にまわすこともなく、
そんなところでおかしな独占欲を出してしまっている自分は、
この金髪をどうしようもなく愛してしまっているのだ。
それがもし、黒月をシカマルに重ねて戦略を頼るようになったというのなら、
淡い期待を抱いても、良いのだろうかと。

膝の間に隠れた表情は見えないが、ナルトの紅い耳に期待が確信に変わる。
握った手はそのままに、ナルトの前まで移動した。
ぎゅう、と抱き込むと小さく揺れるからだは、自分に誂えたかのようにぴったりと腕におさまった。
「俺、お前のこと、好きなんだよ」
そう告げると、腕の中の金髪は、信じられないとばかりに唇を震わせた。
「う、そ…」
「嘘つくなんてめんどくせぇことしてどうすんだよ」
ひとつ苦笑を落として、
「お前のこと好きになって、九尾のことも緋月のことも知った。
お前に追い付きたくって、自分のできること探して戦略部に入った」
この姿でな、と優しく手のひらを頬に這わせ、潤む蒼とかち合う。
「本当は、お前以上に強くなるってのが目標だったんだけど…」
なかなか追いつかなくて、と自嘲気味に笑った。
いつかお前の隣に立てたら、好きだと伝えようと思っていたのだが。
「それが叶う前に、お前が消えてしまうそうだったからな」
それで今の告白。
「もし表のお前が消えても、俺はお前を追う。緋月であるお前になら会えるからな」
「………」
「…何か、言ってくれよ…」
沈黙に耐えきれず、シカマルが唸る。
「…て…」
「ん?」
小さくこぼれた言葉を拾い切れず、もう一度言ってくれと催促する。
「俺の…都合の良い、夢なの…かな…」
ぼろ、と蒼から溢れた雫が、紅く染まった頬を滑り落ちて行く。
「で、も…シカマル、ここに…いる…」
きゅ、と背中にまわる細い腕は頼りなく、それが愛しくて抱き返した。
「夢じゃねぇだろ」
「…ん…」
あったかい、と小さく聞こえて、少し力を入れて抱きしめた。
胸に擦り寄る姿が可愛くて頬が緩む。
「なあ、俺のこと…好きか?」
「…はい」
肝心の言葉を聞いていなかった、とナルトの肩に顔を埋めれば、すぐに返ってきた返答。
「…言っとくけど、友愛の方の好きじゃねぇぞ」
素直過ぎた返答に、幾分心配になってきたシカマルの声は、なんとなく心細そうであった。
わかってる、と涙で掠れた声で伝える。
「好き、大好きシカマル…」
熱に浮かされたかのように好きだと繰り返すナルトに、シカマルの方が赤面してしまう。
思わず変化が解けてしまったほどに。
何か変なスイッチでも入ったのだろうか、けれど今は至極幸せなのでその辺は無視だ。
感極まって、縋りつくナルトを少し離してその唇を塞ぐ。
驚いて蒼が見開かれたが、開いた唇の間から舌を這わせれば、だんだんと瞼が閉じられていく。
柔らかな唇を甘噛みし、そっとなぞれば擽ったそうに身を捩る様に快感が引きずり出される。
「んっ…ぅ、あ、ふ…」
口内を這う舌に翻弄されながら、食べ尽くされてしまうかのような感覚にナルトの腰が揺れた。
その痴態にあてられたのか、情欲に濡れた漆黒を細め、ナルトの上着に手をかけジッパーを下ろす。
シャツを引き出し、素肌に手を這わせると、ひやりとした温度にナルトが身じろいだ。
「んん…!」
上顎を舐められ、歯列を丁寧に舐め上げていく。
息苦しさに、力の入らない腕で覆い被さるシカマルの胸を押す。
「鼻で息継ぎ、しろって」
ほら、と唇を舌で舐められ、噛みつくように塞がれる。
「ん、ふ…ぅ…」
ちゅっと響くリップ音にナルトの頬が更に羞恥で染まる。
上着を敷いた上に押し倒され、中に着ていたシャツは鎖骨あたりまでたくしあげられ、
ズボンはかろうじて足首にひっかかっている程度。
外気に晒された肌を、黒髪の手が這う。
そのたびに揺れるからだに、黒髪は嬉しそうに笑う。

(どうして、こんなことになって…)

いるのだろう。
もう思考もぼんやりと膜が張って、与えられる快楽だけをからだが追って行く。

樹の幹に背中を押しつけられ、足を割って覆い被さるシカマルを、
涙で滲んだ蒼で見つめれば、いつになく飢えたような漆黒を向けてくる。

求められて、いる。

それを感じて、ふるりとからだを震わせた。
「寒い、か…?」
「い、え…」
上に乗っていたシカマルの背に腕を伸ばし、自分との距離をゼロにする。
「くっついてたら…あったかい、から…」
胸に擦り寄り、柔らかな金髪が頬を擽る。
続きを促すように背を撫でられ、焼き切れそうだった理性が本当に切れそうだ。
「…っ…あんま、煽んな…」
再び唇を塞ぎ、慈しむように頬や瞼に唇を寄せる。
「…なあ、お前が欲しいんだけど…くれねぇ…?」
頭で考えるよりも早く口をついて出た台詞に、シカマル自身が驚いている。
既に衣服を乱しておきながら今更な状況だが、初めてであろう相手に一応のお伺いを立ててみる。
ナルトの熱が移ったのかもしれない。
浮かされて、なんだか夢心地だ。
気持ち良い。
「ん…もらって…シカマル、でも、どうした、ら…」
そう、相手の返事を心の底で判っていたからかもしれない。
腹の底から歓喜に満ちていく感覚。
「ああ、何も考えずに俺を見とけ」
おそらく自慰もしたことがないのであろう性に対して無知識に等しいナルトの髪を梳いて、
もう殆どない理性を繋ぎとめてゆっくりと口づけるためにからだを沈めた。
なけなしの理性が残っているうちに、綱手へ緋月と黒月の夜の任務の休暇届けを載せた式を送ることは忘れずに。


闇夜に紛れて二つの影が交わる。
時折、風に揺られてできた木々の隙間から、月明かりが淡く照らす。
切なげに漏れる吐息さえもシカマルは飲み込んで、
反射的に逃げ打つ腰を引き寄せ、流れた涙を舌で舐め取る。
「んっ…」
詰めた息が耳元に落ち、とうとう限界を超えていた理性が焼き切れた。
後ろに這わせた指を引き抜き、自身を代わりに当てる。
「力、抜けるか…?」
「わかん、ない…」
不安そうに見上げる金髪をそっと撫であげ、
「深呼吸…できるか」
「…ん…」
言われるままに、乱れた呼吸を戻していく。
「は…ふ…」
紅い頬で息を整える妙な色気を感じ、すぐにでも穿ちたい衝動を抑えるのもそろそろ辛い。
落ち着いてきた息使いを確認して、いくぞ、と耳元で囁けば、ひくんと怯えるようにナルトが震えた。
「…っ…ん・んあっ…うあ、あ…!」
苦しげな嬌声をあげたナルトを抱きすくめ、膝裏を掴み更に奥へ奥へと推し進める。
痛みで強張るからだに、罪悪感を感じなかったわけではないけれど。
その先にある快楽を感じたいし、感じさせてやりたいと思う。
「ひ、ぐぅっ…」
胸につくぐらいに膝を折り曲げられ、繋がった深さに息をつめるナルト。
うっすら溜まっていた涙が溢れ、ぼろぼろと頬を伝う。
涙に舌を這わせて拭っていく。
「悪ぃ…痛ぇ、よな…?」
「あ…あ、う…」
口を開くも、出るのは意味のない言葉ばかり。
唇を惹き結んでも、与えられる感覚にすぐに口を開いてしまう。
熱で染まった頬で見つめるナルトが可愛いくて、思わずシカマルの口角が上がる。
「可愛いな…」
「え…?あ…あっ…やあ…!」
「動く、ぞ…」
ちゃんと掴まってろよ、と囁いて、最奥を突く衝撃に、腕の中の金髪が悲鳴のような声をあげた。
「あっあっ…はぁっ…しか、まる…痛ぃい…!」
腹の奥に感じる熱に戸惑って、内壁にあたる痛みをどう逃せば良いのかわからず不安気に蒼が見上げる。
普段、里人からの暴力を受け入れ、痛みさえも甘んじて受け入れているのに、
痛いとシカマルに言葉にして伝えるのは、ナルトがシカマルに対して気を許した証拠で、なんだか嬉しい。
「ん…も少し、頑張って…」
気を紛らわせてやろうと首に舌を這わすと、力が抜けるのか背に回された腕がずり落ちそうになった。
「わか、た…っ…」

再びシカマルの首に腕をまわして唇を寄せれば、応えるように触れ合わせてくれる。
苦しいくらいに抱きしめられて、圧迫感がとても気持ち良い。
誰かとこれほどに密着したことなどない。
揺らしてくるくせに、回された腕がしっかりと腰を支えて離さない。
数センチでも離れたくないと言われているようで、それがひどく幸せで。
痛くて苦しいのに、感じるのは歓喜ばかりで。

「どう、しよう…」
「何だ…?」
切なげに、泣きそうに揺れた蒼を、漆黒の双眸が覗き込む。
「どう、しよう、しかまる…」
「ん…?」
見上げるナルトに、動きを止めて視線を合わせる。
「いま、お、れ…」
「うん」
「しあわせ、で…」
「うん」
「どうしよう…」

不安で不安で仕方なくて、戸惑うばかり。
幸せな、自分の願望が作り出した幻のようで。
目覚めたら、ただの夢かもしれなくて。
怖いのだと、ぼそりと漏らした。

「ナルトお前…」
呼ばれて見上げると、困ったように笑うシカマル。
こんなことで不安がって泣いてしまった自分に呆れただろうかと、いっそう蒼が泣きそうに潤む。
「ごめ…「可愛過ぎ」…ぅ…?」
謝罪の言葉を遮って、シカマルが笑った。

俺をどこまではめる気?

本当、あの大名の娘に爪の垢でも煎じて飲ませてやるべきだ。
もともと受け入れる作りではないために、からだへの負担は相当なものであろう。
それでも受け入れようと痛みを飲み込んで、頼りない細い腕でシカマルに縋る。
自分の好きだという一言に不安がって、やっと手に入れたたったひとつの幸せを
手放したくないと泣きそうに震える金髪が愛しくて仕方ない。
与えられる愛が、差し伸べられる手が、当たり前だと思わないこの金髪が可愛くて仕方ない。
縋る相手が自分であるなら、それほど幸せなことはない。

「一生、傍にいる」
それって、ずっと、という意味だ。
思考の鈍る頭の片隅で、思った。
「…ほんとう?」
「本当」
小首を傾げたら、溜まった涙がすうと頬を滑った。
「お前が嫌だっつっても、もう無理だって。もしお前が離れるって言ったら、」

…殺してしまうかも

ふと流れるように生まれた危うげな思考に、シカマルははっと息を呑んだ。
全てが言葉にならずとも、今のは伝わったはずだ。
ナルトがじいと自分を大きな蒼で見つめている。
「や、今のは…」
慌てて言い訳を探すシカマルは、ナルトの表情を見て言葉を飲み込んだ。

うっとりと、笑ったから。

「うれしい」

それほどまでに、愛してくれるなら。
たったひとつの、この命だって喜んで差し出そう。
あなたが食べ尽くしてくれるのなら、このからだだって差し出そう。
そうしてあなたの記憶に刻まれるのなら、あなたの一部になれるなら、自分はきっと幸せだと思う。
最後にこの蒼が映すのがあなただなんて、蕩けるような甘美であろうと。

「しか、あ、んっ…」
唇を塞ぎ、再び始められた律動に、忘れかけていた痛みがやってくる。
「あっ…?」
最奥を突かれて、嬌声に艶が混じった。
痛みだけではない、快楽が生まれ始めて、ナルトは戸惑う。
「ここ、か…?」
様子の変わったナルトに、確かめるように腰を揺らせば、
「ひっ…いやぁ…っあ、しぁま、る…!」
逃げる腰とは裏腹に、蒼白に近かった頬には赤みが差し、強張っていた四肢の力が抜ける。
目尻を紅く染め、呂律のまわらない唇がシカマルを誘う。
「んっ」
誘われるままに唇を寄せ、ぺろりと舐め、そのまま喰らいつくと、思いがけずナルトの方から舌を伸ばされた。
嬉しくなって深く絡ませれば、もっと、と強請るように背を這っていた腕が首へとまわされる。

こんな肉体的な快楽とは一生無縁だと、あっても嵌ることなどないと思っていたシカマルは、自分の考えを一瞬にして覆した。
喜怒哀楽という感情の希薄な奴だと、自分でも思っていた。
そんなの、嘘だった。
だって今、冗談みたいな激情が、心中を渦巻いている。
腕の中の金髪が可愛くて愛しくて、けれどその分、この金髪を取り巻く全てに嫉妬する。
自分が一番でなければ嫌だ、なんて子供じみた感情さえ存在している。

はくはくと上手く呼吸のできずにいるナルトに、それでも唇を離してやれない。
絶頂が近いのか、ナルトが焦りを滲ませた表情で、力の入らぬ腕でシカマルの胸を突っぱねるが、
逆に腕をひとまとめにして掴まれ、頭上に縫いとめられてしまった。
涙で潤んだ蒼で、シカマルを責めるように睨むが、シカマルはどこか嬉しそうに目を細めるだけだ。
そして耐え切れず、
「んっ…んん…!!」
蒼の双眸が閉じられ、抱えていた足がびくびくと痙攣し、腹に欲を吐き出した。
きゅうきゅうと締め付けられる感覚に、シカマルも促されるようにして中へと吐き出す。
「んぁっ…!?」
「は…っ…」
注がれた感覚に驚いたのか、ぎくりと大きく揺れたからだをぎゅうと抱きしめる。
羞恥で頬が更に染まる、その欲に濡れた顔に、ぞくりと背が粟立つ。
「…大丈夫、か…?」
「ぁ…う、は、い…」
自身を中から引き抜き、抱えていた足を外してやれば、ゆるゆると緩慢な動きで四肢の緊張を解いていく。
大丈夫だと、薄く笑う金髪が、たまらなく愛しい。

どうせ洗濯行きだからと、背に敷いていた上着で汚れた残骸を処理。
冷えてしまう前に、名残惜しいけれど服を元通りに着せてやった。
家まで送ると言ったら、森の奥地に本宅があるから来て欲しいと、
シカマルのシャツの裾をくいと引っ張った姿に、やっと潜めた欲が再度発熱しそうになる。
無理な体勢を強いられ、痛むからだを引き摺るナルトを抱えて行ってやろうと申し出たら、
真っ赤な顔で必死に断るので、仕方なく通常よりひどくゆったりとした歩きでナルト宅へ向かっている。
「でさ…どうするんだ?」
「…表から消えるかどうか、ですか…?」
数センチでも離れがたくて繋いだ指先が僅かに震える。
しばらく考え込む動作を見せて、ナルトが困ったように眉を下げた。
「…やっぱり、もうしばらく今のままでいます」
表からも消えず、今のままの生活を続けると言う。
「…いいのか?」
「はい」
愛想が尽きてしまった世界にまだ身を置くのかと。
見つめるシカマルにひとつ苦笑して。

「もう少しだけ、こうやって、あなたといたいから」

ことりと小首を傾げて微笑む姿に、眩暈を覚える。
そうか、と言うのがやっとだった。
ナルトがそう決めたなら、自分がやるべきことは、この笑顔を守ることだ。
そう、自分はこの笑顔を何をしてでも、守ろう。
繋いだ手を強く握って、笑みを返す。


見上げた空には、変わらず月が淡く光っていた。










モドル